目次

ネットワークサロンの基本構想

ネットワークサロンの紹介(動画)

ネットワークサロンが事業を行う目的、地域における事業の機能などのポイントを代表・日置が説明します。(再生すると音が出ます)

設立趣旨書

設立趣旨書

各支援の背景と意義

子どもと家族の支援

障がいを持っていたり、発達が遅れている子どもたちの居場所、必要なケア、療育的な働きかけ、家庭への支援などを行う事業。放課後等デイサービス・児童療育支援・日中一時を併設で行う「ぽれっこ倶楽部」と、小集団で幼児の療育的な生活支援を行う「親子の家」が併設し、総合的な子ども拠点として運営しています。

障がい児の療育と居場所、預かり

現在、釧路近郊には「放課後等児童デイサービス」が60カ所を超え、子どもたちやお母さんたちを支える大きな味方になっています。しかし、こうしたサービスが始まったのは今から20年前の2003年。新しく「支援費制度」がスタートし、児童デイサービスが登場したのです。

それまでは、障がい児を育てているとお母さんは働くことが難しく、諦める人たちもたくさんいました。また、放課後や長期休暇は家族(主にお母さん)が子どもたちの遊びやケアを一手に引き受けている状況が当たり前だったのです。

ネットワークサロンでは児童デイサービスができる前年の2002年に一人の親子の思いから「障がい児等学童クラブ」を自主事業でスタートさせ、翌年からどんな障がいがあっても楽しく過ごすことができる家以外の場として「友達の家」をコンセプトに、ぽれっこ倶楽部をスタートさせました。

ぽれっこ倶楽部へのニーズは当初から非常に高く、事業を立ち上げてもすぐにいっぱいになりました。それだけ、家族も子どもたちもそうした「当たり前の場」を求めていたと言えます。

今では多くの事業所ができて、選べるほどになりました。ここ数年は全国を見ても放課後等デイサービスはものすごい勢いで増えて、今は「療育の質」が大きく問われる時代になりました。子どもの発達や今の社会における子育て事情(虐待、DV、愛着の問題)を踏まえて、制度事業ありきではなく、親子のニーズによりそう姿勢や工夫が求められています。

制度の隙間「親子の家」

「親子の家」制度的には『地域活動支援センター』を活用していますが、実はこれはとっても珍しく、イレギュラーと言えます。

地域活動支援センターは2006年の自立支援法以前に「小規模作業所」が移行するために設けられたメニューでした。では、なぜその事業を「親子の家」に活用したかというと深いわけがあります。

それまで「親子の家」は児童デイサービスとして運営していましたが、大きな課題があったのです。それは2、3歳時点で成長、発達に心配がある子どもを持つ親御さんが不安でいっぱいの中、障がい認定を受けてサービスを利用しなくてはならない心理的なハードルの高さでした。

ネットワークサロンは障がい児の子育ての悩みからスタートしたので子育てをスタートするときの負担の軽さ、敷居の低さ、フレキシブルさがとても重要であると思ってきました。

地域活動支援センターは受給者証を必要としない「地域生活支援事業」に位置付けられ、利用料も基本は無料。利用にあたって非常にハードルが低い、気軽にアクセスできるものになったのです。発達が心配な子どもたちのためには療育を行う専門的なサービスも必要です。しかし、今の社会では子育てそのものに多様な困難があるなか、気軽に活用できる、柔軟な応援メニューがあることはとても重要です。今は制度の隙間ですが、隙間だからこその意義を大切に、家庭や子どもたちの育ちを応援したいものです。

障がいのある方の通所支援

障がいをお持ちの方々が、それぞれの個性や能力に応じて、日中に必要な支援を受けながら、活動や就労に取り組む機会を提供しています。

通所サービスのこれから

生活介護、就労継続支援と、障がいを持つ人たちが日々通うサービスはここ10年余りで急激に増え「行き場がない」という切羽詰まった状況は一定程度解消されたと言えます。

ネットワークサロンが発足した2000年には通所授産施設と小規模作業所を含め数カ所で、しかも、送迎や給食サービスもない状況が当たり前でした。しかし、今は約100カ所(生活介護、就労継続支援B型、A型)の通所事業所があり、数の上では選択ができるようになりました。

一方では数は増えたものの、サービスの質に関しては、障がいの理解や一人ひとりのニーズに合ったケア、活動プログラム、作業、就労などの社会参加の機会保障が広がっているとは言えない難しさもあると感じています。

今後の注目ポイントの一つとしては、通所事業のプログラムの充実(特に社会参加という視点、一人ひとりのニーズを引き出し、ニーズに沿う視点)が挙げられます。

もう一つは、利用時間や曜日の問題があります。

放課後等デイサービスの充実によって、放課後や長期休暇の居場所を保障し、働くお母さんたちも非常に多くなり、毎日朝から夕方まで利用できる環境が子どものうちから整っているのがデフォルトとなっています。

ところが、学校を卒業してから利用する通所サービスは3時半や4時などに終了することが多く、早く帰っても家族がいないケースもあります。これまで、ぽれっとでは日中一次支援やPASSの居宅系のサービスと組み合わせたり、一部のグループホームで日中一時支援として夕方の預りを行うなどの対応をしてきた経過がありますが、どうしても限界があります。

また、親の高齢化やご本人の加齢による介護度の高まりなどにより土日や祝日の介護の必要性があってもヘルパー利用も難しい場合に土日の通所利用ニーズもあると感じています(高齢者のデイサービスは毎日やっているのですが、障がい福祉サービスは土日お休みが多いです。就労支援は仕事と考えると土日お休みは自然ですが、生活介護であれば土日だから介護がお休みというわけではないので、介護の保障という意味で必要なのかなと思っています)。

ただ、そういったニーズがあるとわかっていても、慢性的な人手不足もあり、なかなかニーズに沿うような運営ができるわけではない事情がありますが、何とか工夫をして社会参加の保障と家族の負担軽減など、当たり前の生活を支える存在でありたいと思っています。

障がいのある方のくらしの支援

障がいがあっても地域で安心した生活を送るために、実際に生活拠点とケアを提供する「グループホーム」と一時的に提供する「ショートステイ」、一人暮らしの方に日常生活のちょっとした困りごとの対応を手伝う「自立生活援助」そして、自宅で生活する人に必要な個別ケアを届ける「ヘルパーサービス」があります。

柔軟な生活支援の難しさ

「居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、移動支援」や「グループホーム」、さらには「ショートステイ」は障がいをもつ人たちやその家族が当たり前の生活を送るためには非常に重要なサービスです。

当たり前を支えるためには日常的に気軽に柔軟に利用できることがポイントになりますし、なおかつ障がいの程度を理由に断られたり、利用が困難になったりすることは権利保障・擁護の観点から避けなければなりません。

しかしながら、障がいの程度に関わらず柔軟で気軽なこれらの個別的な支援を提供するためには、人材の確保や育成、手厚い支援体制の構築、制度の充実が求められるところですがその体制づくりには多くの課題があります。

例えば、重度の知的障がいや精神障がい、発達障がいのために行動面での個別の手厚いサポートを提供する『行動援護』はニーズは高いものの全国的にも担い手の養成が不十分で、釧路でも実施してくれるところが非常に少ない状況です。

また、医療的なケアなど常時手厚いケアが必要な人たちの在宅サービスは継続した提供が厳しく、いまだ多くの家族支援に依存している状況が続いています。

そして、そもそも日常的な外出も難しいことが当たり前になっています。例えば、日曜日の朝起きたらとても天気が良いので、釣りに行きたい、アイスを買ってきて食べたい、何ならちょっと散歩に行きたいと思ったときに多くの人は思い思いに行けますが、障がいがあるとそうはいきません。

一人で出かけられない人はヘルパーに依頼することはできますが、日曜日の朝に天気がいいからと言って電話をしてもヘルパーさんが来てくれることはほぼ難しいのが実情です。

障がいが重度で介護が高いほど、気楽に出かけることはより難しく、それを実現するためには家族が頑張るしかなくなります。

ネットワークサロンでもできる限り障がい程度などに制約されずに必要性に基づいたサービス提供をしたいと考えていますが、人材不足など体制の限界からニーズにお応えできない場合も出てきています。

今後、多くの人たちの理解や協力のもとに充実できるような体制づくりや提言を続けたいと思っています。

若者など社会的に弱い立場にある方への支援

若者支援の重要性

困難な家庭で育った若者たちが自立を促すため、公的な事業としては、児童施設退所後等に共同生活を送る「自立援助ホーム」、生活困窮者自立支援制度の学習支援を軸として、子どもや若者が家庭環境に関わらず、自分が望む暮らしができるよう支援体制を整えてきました。制度外の相談や下宿などの生活の支援や就労支援をネットの居場所ポータルサイト「死にトリ」や休眠預金などの助成事業を組み合わせながら、必要な取り組みを進めています。

ここ数年は死にトリの活動や若者たちの当事者活動を通じて、釧路や北海道だけではなく、全国から支援を必要とする若者たちがつながってくるようになりました。背景には格差や孤立の課題があり、子どもたちを育む環境が厳しい家庭はさらに深刻化し、孤立を深めていく状況があります。

それは、本人や家族の問題ではなく、社会的な背景や課題が大きな影響を与えています。日本においては子どもは家庭で育てるべきであるという家庭の責任を問う考え方もまだまだあり、社会的な支援の整備も不十分です。

そんな中で、支え育む機能が失われてしまった家庭で育った子どもや若者たちが自分の力ではどうすることもできずに、様々な機会を奪われ、自立のチャンスを十分に与えられないまま「自立しなければならない」社会的なプレッシャーを受けています。

ネットワークサロンでは若者たちにまずは安心で安定した生活基盤と学習や生活スキルを身につける機会が保障され、それぞれの持っている力を発揮できるような活動・仕事の提供とトータル支援の仕組みをモデル事業を組み合わせながら構築してきました。

これからも、若者たち自らも参加しながら自分らしい自立ができるための支援体制を創造する取り組みが期待されています。

相談支援

障がい福祉サービスの利用に際して「サービス等利用計画」を作成することになり、徐々に拡大、浸透してきました。まだ、制度設計の課題から計画作成と既存のサービス調整への役割にとどまっている現状がありますが、本来の相談支援としてあり方が問われています。

相談支援機能はネットワークサロンの役割の中核と言えます。制度事業やモデル事業になるならないに関わらず今までずっとニーズをキャッチを意識してきました。だから、相談事業そのものよりも、各事業やサービスの日常の場でいかに「相談支援機能」を果たすかが実は大事なのです。

サービス等利用計画の意義

ここ数年、障がい児者を取り巻く制度は大きく変化をしています。2003年にスタートした支援費制度は財源確保に問題はあったものの、地域生活の可能性を大きく広げました。

さらに2006年にスタートした自立支援法から総合支援法などその後めまぐるしく体制の整備、調整は続いています。

その中で、注目すべきものに「サービス等利用計画」の作成があります。そもそも、地域生活において何よりも大切なのは「相談支援」であり、その体制強化の必要であると言われてきました。なぜなら、障がいは個人の問題ではなく社会との関係の中に生じるため、しっかりと一人ひとりのニーズを聴き取りそれに基づいて支援が展開されなければ、障がい児者が社会の事情や条件に合わせることになってしまうからです。

相談支援の重要性は理解されていたものの、制度の中での活用がうまくいかず、一人ひとりの夢と希望に基づいた支援が進められることが実現しませんでした。そうした背景から2015年から障がい福祉サービスを利用するすべての人たちに「サービス等利用計画」を立てる(オールケアマネ)になったわけです。

人材などや体制的に実現が厳しい部分はありますが、これは画期的なことです。今まで社会やサービスに合わせることが多かった障がい児者やその家族の思いにそった総合的な計画が考えられ、それに基づいた生活を実現する体制の基盤ができたことになります。

大事なのはこれから実際に地域でサービス等利用計画が形だけではなくそうした趣旨が理解された上で、有効に活用されることなのです。

相談支援に関しては、法定事業としてはいんくるがありますが、相談は事業として取り出してやるのではなく、各サービス全てに「相談支援機能」があり、日常の至るところで当事者の声や思いを受け止めることが何よりも重要であると考えています。