(31)一人ひとりの思いを大切に 

いろんな地域で地域のために何かやりたいと思っている人たちに相談を受けることが多くありました。多くの人が今の社会の中にあるさまざまな課題を感じて、自分にできることをしたいと思うことはとても大事なことだと思います。そんな中で、改めて再認識するのは「一人ひとりの思い」の大切さです。

ネットワークサロンの歩みはたくさんの「生みの親」たちによってつくられてきましたぽれっともぽれっこもグループホームも就労支援などその他数々の事業はたったひとりの「困っている」という声や思いを表現してくれた存在がきっかけになっています。また、事業として拡大しなくても、すぐに何かにつながらなくても、その積み重ねこそとても大切だと思えます。

例えば、2001年にぽれっとスタートと同じ時期に運営を引き埋めたフリーハウス(フリースクール)には不登校の高校生がやってきました。ぽれっとで研修生としてのボランティアを経て、自信をつけていき、外のアルバイトを見つけて自らサロンを卒業して行きました。その後、ヘルパーの資格をとって高齢者介護の現場で働くことにつながりました。

また、いんくるが始まったころに親の会仲間の医師から紹介されてやってきたの小6がいました。かなりの勉強嫌いで個別対応をしてもらいたいというお母さんの思いを受けて、当時そうした子どもへ個別支援をしたいと思っていた若手スタッフが個別活動を浦見の本部で一緒にすることになりました。しかし、勉強をするために来るのですが、そもそも勉強嫌いでやる気がありません。スタッフは何とか活動意欲を高めるためにオプション活動として簡単な料理、大好きなガンダムのプラモデル作りなどをしていました。もちろんそのオプションが現実的な活動になったのは言うまでもありません。私は本部にいて時々作ったお菓子などをもらいながら彼の成長を見てきましたが、2007年に冬月荘ができて活動場所を移動しました。彼一人の個別活動はその後のスクラムの勉強会と合流して今では全国各地に広がる学習支援のベースになっています。その後、立派な高校生になり、自ら実習を売りこむなど、就活につながりました。

それから、厚岸の小さな海辺の地域で不登校から引きこもりがちになっていた16歳の女の子にボランティアさんを紹介したこともありました。人との関わりが得意ではなく、地域的に活動をするようなところが身近にないけれど、何とか社会との接点を持つことはできないかと考えた結果、手先が器用で物作りならということで、物作りが得意な人の存在を思い出したのです。ヘルパー資格も持っていることもあり、以前から「何かあったら手伝うよ」と声をかけてくれていました。一緒に厚岸の海辺の自宅まで訪問して話をした後、月に1回程度本部で編み物教室をしました。私も一緒に編み物をやり、楽しいリフレッシュの時間でした。その他、地味だけど一人ひとりの思いに向き合い、一緒に考えたり活動したりしたことが本当にたくさんあって、それの積み重ねでいろんな事業につながっていき、ネットワークや人も育ったような気がするのです。

だから「何かしたいと思っているのに、次の一歩が踏み出せない」と相談に来る人たちには繰り返し伝えているのは「一人のためにまずは行動を起こすことが大切」だということです。お金がないとか、時間がないとか、拠点がないとか、理解がないとかできない理由を考えるのは簡単です。また、一人のためではなくもっと広く地域のために社会のために何かをしたいと思っているのかもしれません。でも、一人のためなら何かはできるし、一人のために何もできないのに社会のため地域のためにできることなんかあり得ないと私は思うのです。

これからも一人ひとりの思いを大切にしたいと思っています。