(30)幻の当事者活動 自立を応援する冊子づくり

 ここ数回は生活保護世帯への自立支援プログラムについて振り返っていますが、今回も続きです。2005年のワーキング会議や親子サロンでのモデルプログラム、そして就職準備講座などを通して生活保護を受けている方たちの感じていること考えていること、おかれている状況が見えてきたので、年度末のワーキングで私なりに今後の提案をしました。それが以下の通りです。

①自立のためのガイドブック作成
 ・正しい情報をわかりやすく
  相談窓口や子育て支援情報はもちろん、経験談、コラム、イラストなども
 ・行政と対象者を巻き込んだ作成
  →正しい情報、必要な情報を集めてまとめることができる
  共同作業により、お互いの理解促進
  必要なこと、足りないことなどニーズを知ることができる
  関係機関との連携が深まる
  エンパワーメント、ピアカウンセリングの機会となる

 この提案の効果かどうかはわかりませんが、翌年2006年の委託事業として自立を促進する冊子作りに取り組むことになりました。私は張り切って当事者や福祉事務所が協働して情報発信ができるように企画書を作成し、コンセプトや方法、スケジュールを含めて細かく記載した提案書を市役所に出しました。ところが、その企画は当時の市役所文化(担当者)には理解しがたいものだったのか、冊子作り自体に乗り気ではなかったのかわかりませんが、結局、その後のレスポンスがないまま作業は滞り、年度末ぎりぎりになってから急きょ突貫工事で作成することになってしまい、当事者の社会参加と行政との協働プランは幻になってしまったのです。前年に自立をめぐってずいぶんと議論を重ね、理解が進んだ手応えもあり、共有するものが増えたとはいえ、実際の協働とはそんなに簡単なものではないことを痛感しました。

 これからの地域を活性化し、立て直していくためには立場や価値観の違う者同士が理解し合い、新しい地域を創造する取り組みを積み重ねることが重要です。普段、自分が見えているところからちょっとだけ広い視野を持って別の角度から見てみたり、ちょっと立ち止まって社会や地域の中における自分たちの役割や立ち位置を確認したり、自分とは違う見方や立場を自分たちの仕事に生かしていく作業が必要になります。しかしながら、立場や考え方の違いはそう簡単に理解し合うことは困難です。違いは容易に排除や対立や反発を生みだします。また、理解したつもりになったり、表面的に理解したふりをしたり、理解してもらえない時には相手の無理解を批判し、自分の理解が見えなくなる時もあります。

 2006年の理解と協働プランは幻に終わってしまいましたが、理解してもらえなかったことを一方的に批判せず、めげずにできる範囲で事業に取り組んだことを今になって「よかったなぁ」と思っています。なぜならば、上記の冊子づくりの提案時の際に並べて記載した以下の項目はさまざまな人たちとの共有、協働につながっているからです。

②他の分野とタイアップした支援事業の展開
 ・就労支援
  高齢者や障害者や若年者のニーズと似ている
  →相談援助と継続した就労支援、訓練プログラムなど
 ・子育て支援
  少子化対策と重なる 
  →多様な預かりの場 情報交換や身近な交流の場 仲間づくりなど
   親ももちろん、子どもへの対応を誤ると将来が大変
 ・ケースワークからマネジメントへのステップアップ  
  個別援助とネットワーク作り、支援体制整備、資源発掘などの両輪が必要
  →各機関との連携や協働の検討、模索