(16)事務・会計・庶務

援費制度のスタートに伴って事業が拡大した様子をお伝えしていますが、同時に飛躍的に拡大したのが「事務」です。それまでの2年間は事務職員というのは存在せず、会計帳簿は私がこづかい帳に毛が生える(ひょっとしたら、こづかい帳の方がまだましかも?!)ほどの帳簿をつけて、単式簿記で他の法人の決算を見よう見まねで何とか対応してきました。労務はぽれっとがスタートした2001年から、外部委託をして社会保険や雇用保険などの手続きをしてもらっていました。その他の事務(各事業の補助金の申請や税務関係の手続き、NPO法人に関する支庁への報告や書類提出、法人に関する法務局への登記関係の手続きなど)見よう見まねで何とか対応していました。

しかし、2003年の支援費制度のスタートにより、まずは職員が格段に増えたことで労務が大幅に増えることになります。さらに、予算は億単位に突入し、会計処理も膨大になり、しかも現場が複数になるため処理が複雑になります。税務もそれまで法人税法上の収益事業を実施していなかったことからスルーできていた法人税への対応も必要になるらしいのです。これは、どこからどう考えても素人の限界は超えていると自覚し、まずは、会計と税務はプロにお願いすることにして税理士事務所を紹介してもらい、格安料金にて委託契約を結ぶことができました。

そして、労務と日々の事務処理はいったいぜんたいどうしようかと困り果てていたところで社会保険労務士事務所の担当者が転職を申し出てくれました。年々膨らむ会社の状況から推測して、事務職員として志願をしてくれたのです。会計事務所に監査や決算の事務処理を委託しても日々の伝票をつけたり、銀行に行ったり、書類を保管したり、支払いをしたり、こまごましたことは増えるばかり。とてもずぼらな私たちの手に負えるものではありませんでした。税理士事務所への委託と事務員さんが来てくれたおかげで、それまで実に危なっかしくこなしていた事務機能が格段にアップしました。

しかし、新しい事務仕事が待ち受けていたのです。それは「請求事務」です。支援費事業は実績に応じて請求を毎月出さなければなりません。今でこそ、専用ソフトで一括管理していますが、導入するお金はないし、件数もそれほどあったわけではないので、書式を見ながらエクセルでデータ記入シートと個別シートが連動するスタイルで作りました。デイサービスは利用する人が決まっているし、サービスコードも単純なのでまだよかったのですが、ヘルパー事業はサービスコードが利用時間によってさまざまな組み合わせがあり、手作業は非常に地道であり予想以上に時間のかかる仕事になりました。

毎月、請求の締め切りである10日の数日前は夜中過ぎまで事務所で請求書類を作成する羽目になりました。また、手作業はミスも多く、市役所に提出してもたくさんの付せんがつけられて戻され、差し替えることを繰り返したものです。ある時、夜中に疲労いっぱいで帰る途中、検問に止められ、「お酒、飲んでませんよね?」と声をかけられた時には、かなり本気でむっとして「飲んでるわけないでしょ!仕事終わって、帰るんですよ!!」と睨みつけたことを思いだします。

今では事務員の方たちが大活躍して事務をうまく分業してくれていますし、管理用の各種ソフトも充実しています。でも事業を開始した頃はそうした間接業務を行う職員を置くほど余力のない時期はずいぶん長かったので、今思い出すとよくやったなぁと思います。 

たかが事務、されど事務。事務仕事はすべての仕事の基本とも言われますし、会社を支える重要な仕事です。また、変化・進化が避けられないNPO法人にとって全体像を把握したり、事業の実績状況を確認する意味でも非常に重要であると思います。