(9)活動の原点〜地域の関係者とのワークショップ
前回あらためて法人趣旨を紹介しましたが、今回もその続編としてネットワークサロンは何のための会社であるか?を教えてくれる事業について紹介します。2000年の9月から約1年間かけて実施した「釧路の地域生活を考えるワークショップ」です。当時、事業体として独立し、NPOとして歩むための覚悟を決めたものの、職員の身分保障できるような財力もないため、ちゃんとしたサービス提供ができる体制にはありませんでした。趣旨書に書かれた理念に基づき、限られた体制の中でも自分たちにできることを考えて、思いついたのがこのワークショップでした。誰もが生き生きと暮らせる地域づくりを考えみると「それが具体的にどんなものなのか?」というイメージや思いが地域の中に共有されていないことに気付きました。そこで、自分たちの役割として地域の関係者に呼びかけてみんなで話し合ってみようということで発想したのです。これまで似たような機会は行政が主催する障害者計画策定市民委員会のようなものがありました。また、親の会や福祉団体が行政の方と話し合いをするような場もありましたが、私はいつもそうした既存の場には限界を感じていました。どこか形式ばっていたり、行政が一方的に攻撃されて守りのモードに入ったりなど、参加者がそれぞれの立場を引きずって、お互いの立場を尊重できずに、対等な話し合いや共有ができる状態にはなく、いつも歯がゆさを感じていたのです。行政の人も学校の先生も違った障がいの当事者や親も一人ひとりはとても真剣に障がい児者の生活のことや地域のことを考えていて、それぞれ一生懸命やろうと思っているのに、なぜか立場を持って話をするとうまくいかないのです。みんなが本来持っている気持ちや思いを素直に共有して、みんなで釧路のことや障がい児者の地域生活について語り合いたい!そういう場を作りたいと思いました。そうして、実施したのがワークショップだったのです。私は経験からサロンで実施するワークショップには2つのルールを作りました。1つは肩書きを抜きにして話し合いをすること。参加者はお互いに見知った中であっても名字だけで呼び合い立場を話し合いで持ち出すことをやめにしました。もう1つは発言を後で持ち出さないこと。その場での意見はワークショップのものとして「あの時、あなたこう言ったでしょう!」と引きずらないことを約束にしました。
当時の駆け出しのまだ NPO になる前の一団体が呼びかけての集まりでしたが、関係者の皆さんは快く気楽に参加をしてくれました(まだ、何の権威も力もない存在だったのでそれで皆さんが無警戒だったこともあると思いますが)。市役所社会福祉課の課長さん、養護学校の校長先生、児童相談所の所長さん、社会福祉協議会の方、建設業の方、いろんな障がいいろんな年齢の子どもを持つ親たちなど、その時によって人数の増減はありましたが、たくさんの立場の人たちが参加してくれたのです。そして、先のルールも功を奏したのか楽しくみんなで話し合いを進めることができました。そうして、3回目の話し合いを経て理想の姿を絵にしてみました。それがこれです。
これを見て、どう思いますか?2001年初めの当時はこの絵はまさに釧路の夢の姿でした。一緒に描いた参加者誰もが「こんな釧路だったら、すごいよね~。いいねぇ。」と思うような憧れでした。ところが、どうでしょう。2015年ぐらいには当時に描いた姿が実現していきました。
今のネットワークサロンの事業はこうして地域の皆さんの思いを受けて、それに後押しされて実現したのです。ぽれっともぽれっこもPASSもグループホームもケアホームもほかのどんな事業も法人が事業をするために実施しているのではなく地域のニーズがあったからこそ、必要としてくれる人がいたからこそ存在しています。
地域のマネジメントを基礎にして地域のニーズに裏付けられて事業を担うものとして、単に描いた絵を実施するだけの存在になってはいけないと思っています。本当の意味で地域の人たちや利用する人たちに必要とされる存在になることが重要です。そのために「誰のための事業なのか?」「本当に必要とされる仕事をしているのか?」と問い続け、そのための努力を続けなくてはならないと思っています。