(20)お金のこと その3

お金の流れが支援費制度によって激変し、事業の急増によって資金繰りが苦しくなった2003年度。10月には4つ目の児童デイサービスがスタートしていました。とりあえず確保したのが古い一軒家。もともとグループホーム用に紹介されていたので春には転居の予定で経過的な使用でした。2月頃から新年度からの転居先を探し始めました。ところが、時期が悪かったのです。新年度を間近に控えたこの時期は一軒家の需要が高まります。多くの一般の人が家を探している時期に児童デイサービスで障がい児を預かるために家を貸したいと思う不動産屋さんは少なく、物件探しは難航を極めました。

刻一刻と時間は過ぎましたが、拠点は見つかりません。3月からコミュニティ下宿としての活用が決まったその拠点は使い続けることができないので、どうしても次の家を探さなくてはならなかったのです。そんななかで、「売家」として発見されたが今のぽれっとの家です。7LDKで20畳の集会室つき、近くに公園があり、駐車スペースも何とかなりそう。こんな条件はめったにありません。しかし、いかんせん「売家」。安いとはいえ1000万円弱の経費がかかるのです。そのころの財務状況は前回紹介したとおりボーナスも払えなくなるぐらいの最悪の資金繰りです。現金で買うなんてことはもちろん、借入をしての購入も税理士事務所の担当者の「今の状況じゃとても無理です」とにべもなく断られました。

そこで、私は覚悟しました。「夢債券」なるものにかけてみようと。条件は整っていました。現実の資金難、買わないと確保できない3ぽれ拠点、そして次から次へのあふれるニーズへ対応するための急速な事業拡大。これらに対して「夢債券」が何かの答えを出してくれるのではないだろうか?そうして、呼び掛け文を作り、身近な人たちに営業に回ったのです。

結果は一日で約800万円が確保され、最終的には1000万円以上の協力を得ることができました。これは本当に嬉しい出来事でした。これまでも、そしてこれからも応援してくる人たちがいる、その応援を実感できたことは「これでいいのか?」と疑問を感じたり、「大丈夫か?」と不安に思ったりしている私にとってはこれ以上ない励みになったのです。それと同時に、目先のお金の問題も確かに大事だけれど、それ以上に必要とされる仕事をしていくこと、信頼をつくっていくことが重要であることを確信したのです。その後もお金には頭を悩ませる場面に出くわすこともありますし、制度改正など外的な条件でお金の面で翻弄されそうになることもありますが、そうした経験から目先のお金に振り回されることなく、大切にしなければならないことを大切にすることができました。

NPOの運営に関して尽きない悩みのネタとして「お金」についてよく挙げられます。私はこの経験を通して、お金の悩みの本質は本当はお金のことなんかではなく活動の目的だったり、何を大切にしなければならないのか理念だったり、そんなもっと大切なことを問われているのだということを学んだのです。