(11)地域の人たちの思いの結集~2003年のお正月のできごと

お正月にまつわる思い出はないかと思いめぐらせていて、ひとつ思い出したことがありましたので、紹介します。それは2002年度に実施された釧路市障害者福祉計画策定の経験です。  

その計画は、障害当事者や家族、福祉関係者、公募市民の方々などによって組織された「障害者福祉計画策定市民委員会」が策定主体となり、障害者団体や障害者、市民などから寄せられた意見や庁内組織である「障害者福祉計画策定検討委員会」及び「検討委員会ワーキンググループ」の検討内容を取り入れ、さらに本計画策定にあたり実施された本市の身体障害者・知的障害者・精神障害者・一般市民の皆さんを対象とした「障害者の生活実態とニーズ」に関するアンケート調査の結果をふまえて、策定委員有志によって発足した「検討部会」が議論の整理や取りまとめを行い策定されました。こうした策定過程はまさに市民を中心とした多様な立場の人たちの協働そのものであり、計画実施へ向けて強力な連携の基礎をつくる意義深く、画期的な取り組みとなりました。

通常、計画づくりへの市民参加は会議への出席し意見を言う程度か、ワークショップなど参加型の会議程度でしたが、このときの検討部会は最終的には計画の本文執筆も全面的に担うほど主体的に動きました。2003年のお正月を迎えるころ、ちょうど仕上げの時期だったために、中心で動いていた私は年末年始に必死に作文をしていました。おかげでできた計画のほとんどが市役所発行とは言いながら、実際に地域で活動する市民の共同執筆になっています。私の以前使っていたパソコンには「障害者計画」というフォルダに各章の本文がきれいに収められていているのです。ここでは、みんなで当時つくった「計画の基本理念」と「基本目標」を紹介します。

  計画の基本理念

 本計画は、どんな障害があっても一人の人間としてあたりまえの生活を送ることができるよう、『生命の尊厳・人権の尊重』を基本理念として各種の施策を実施します。

  計画の基本目標

⑴「同情的障害者観」から「共感的障害者観」へ

 社会全体が障害をもつ人を当たり前の一人の人間として理解することが人権尊重の基本となります。障害者福祉は障害を持った人たちのために特別にあるのではなく、すべての市民が豊かな生活を送るために必要不可欠な社会システムであることを自覚し、整備を図ります。

⑵地域生活を中心に据えた施策展開

 従来の施設での生活中心の施策から地域であたりまえに生活することを前提とした施策へと展開します。地域生活においては、家族介護を前提とすることなく、社会全体で障害を持つ人たちの生活を支えることができるようなシステムづくりを目指します。

⑶地域社会で生活できるきめ細かな環境づくりの推進

 どんな障害があっても住み慣れた地域社会において自律した生活をおくれるよう福祉サービスを中心として医療・保健、教育、都市計画など関係分野も含めて総合的に支援体制の充実を図り、地域生活のあらゆる面においてきめ細かな環境づくりを推進し、障害をもつ人も障害をもたない人もすべての人が住みやすいまちづくりを総合的に実現していきます。

⑷障害を持つ人たちの主体性の重視

 総合的に進められる支援体制のもとで、どんな障害があってもそれぞれの状況に応じた方法で自らサービスを選択、利用するなど主体的に生活を組み立てながら生活を実現することを重視していきます。

⑸ノーマライゼーションからエンパワーメントへ

 すべての人が住みなれた環境で生活し自己実現を目指そうとするノーマライゼーションから障害者が力を発揮し、自らの手で自己実現できるエンパワーメント型の施策の充実を図ります。

⑹障害者・行政・企業による協働~計画策定への参画

 障害者に関わる施策の計画策定・決定・実施及び評価への障害をもつ人自身の参加が保障 され、行政・障害者・市民・企業の協働によるまちづくりの促進を図ります。