制度改正に思う~制度は誰のもの?

4月からの制度改正と報酬改定の処理がようやく落ち着きました。

事務手続きは少し落ち着いたものの、別に大きなもやもやを抱えることになりました。

というのも、福祉制度が制度を利用する人たちには全然理解されていない実態があり、報酬改定によってますますわからないという状況が進んでいる現実に直面してしまったからです。

私は福祉サービスを利用する家族の側面がありますが、福祉事業の運営もしていることから、報酬改定について理解しなくてはならない事情があるので、今回は特にいろいろな必要性から調べたり、勉強会に参加したり、手続きをしたことによってのその内容を理解しました。

現場のことも、制度の基本的な仕組みもわかっているからこそ、何とかわかることができますが、それでもとても難しさを感じましたし、まだちゃんと理解しているかというと怪しいところがあります。

それが、制度を使う人が理解できるかというと、知る機会や教えてくれる人がいないので、よくわからないのは当然です。

使うための手続きとして役所に行けばいいのかなとか、相談員がいて、その人が何か書類を作ってくれる必要があるのかなとか、事業所を利用したら責任のある人が「計画」を立ててくれるんだなとか、利用料も必要に応じて払うことになるけれど、大人になるとほとんど自己負担は本人の所得に応じるのでそれほど負担があるわけではないなど、それぐらいは何となくわかると思います。

ただ、今の総合支援法の趣旨とか、利用している事業所の責務とか、相談支援専門員やサービス管理責任者の役割とか、サービス等利用計画がなぜあるのかとか、そもそもの制度は何を目指して、何のためにあるのかということを知る機会はなく、今回の報酬改定によって個別支援計画に書くことになった標準的な利用時間の意味とか、加算は何なのかとか、児童分野の5領域って何なのかなどなど、請求サイドや事業所の責任者サイドで話題になったことについても、理解する機会はないのではないかと思います。

そんなことを別に知らなくてもいいから、使えたらそれでいいという人もいると思いますし、実際にはそれほど困ることもないとは思います。

でも、「人の暮らしや人生を支えるための制度がこれでいいのかな」と思うもやもやが私の中では広がっていきます。

2006年の自立支援法がスタートした際には「誰でもわかる自立支援法」という読み物を作り、冊子にして利用者さんに配布をしたり、サイトでも紹介し、わかりやすいと言ってもらい、その反響に手ごたえを感じたことを思い出しました。

本当は継続してそうした発信を続けていく方がいいのだろう…と思いつつも、事務処理に追われてそちらに力を入れられない現実もあり、ただただもどかしさがあります。

それは誰の役割なのだろう?と考えていますが、制度を作っている国やそれを運用している自治体の役割である気もしますし、サービス利用を調整している相談支援専門員の役割もありそうな気がしますし、それぞれのサービス事業所のような気もしますし、利用する自分たちの姿勢にも関係しているようにも思います。

制度が現場や当事者のよくわからないところから提供されて、提供されたルールやメニュー合わせてサービス利用が進んでしまう流れができてしまっていて、必要なことから制度ができたり変わったりする本来の方向性や、私たちの民主主義や政治的な意思決定がどんどん現実的ではなくなり、福祉事業という巨大な市場としての存在感が大きくなっていきます。

NPOは主体的に社会課題について考え動く市民活動なので、本当はそうしたことへアプローチする必要があるのですが、今回の報酬改定に際しては、事業所にとって必要な事務手続きをすることで精いっぱいで市民としてのアクションが後回しになることを痛感しています。

すぐに制度解説をできるわけではないので、せめてできることとして、私の仕事仲間であり制度を当事者にわかりやすく説明できる第一人者だと私が思っている又村さんのサイトを紹介したいと思います。

https://plushearty-salon.com/

動画もたくさんあって、いろいろわかります。

先日も私が関わっている団体で今回の制度改正・報酬改定に関する勉強会を又村さんを講師に招いて行い、講義後に対談をしたのですが、今後の障がい福祉制度の行く末は私が今回もやもやとしていることに取り組まずして、先に進まないことを実感しました。

つまり、待っていても何も変わらないし、受け身でいると望まない方向に行ってしまうかもしれないので、何かしらのアクションが必要になっていくと感じています。