(35)地域の資源を生み出す役割
ネットワークサロンが外部に生み出してきた組織や事業について振り返ってみたいと思います。今では事業がずいぶんと増えてしまい、結果としては北海道で最も事業規模の大きな事業型NPOになってしまいましたが、趣旨書には『…ひとりひとりの思いに応え、夢を着実に実現するために、釧路地域の「人」や「知恵」を総動員できるような、人と情報のネットワークを創っていく「強い意志を持った事業体」として…』と書いてある通り、ネットワークサロンは地域に人と情報のネットワークを創ることを想定し、それを重要な役割と位置付け、たくさんの組織やネットワークを創ってきています。
一つは2002年2月に発足した釧路地区重症心身障害児(者)を守る会です。時代は2000年から社会福祉の基礎構造改革を迎えて、格段に地域生活支援整備へ制度はシフトしましたが、それでも非常に厳しい状況だったのは知的にも身体にも重い障がいを持つ人たちへの支援でした。福祉だけではなく、教育や医療なども含めていろいろな関係者が一緒に考えていくことを目的に釧路支庁、市役所、児童相談所なども巻き込む形で医療的ケアもついた通所サービスの実現に向けての発足でした。翌年からは養護学校の先生たちや地域の施設職員たちの協力も得て「お試し通園事業」を毎年行い、その動きが他の親の会との連携により、社会福祉法人アシリカ、多機能通所事業所はばたきの創設へと展開しました。2007年、2008年ははばたきができるまでの経過措置として生活介護事業「ふれあい」の運営協力を行っています。
また、同じ年の2002年9月には北海道子どもの虐待防止協会釧根支部の立ち上げに関わり、その後の事務局は継続して担っています。教育大学、児童相談所、保健所など支援を必要とする関係者が緩やかにつながり細く長く活動することで、それぞれの現場で子どもの養育に関する困難事例がある場合には非常にスムーズに連携ができてきました。公的機関のメンバーも多く、数年ごとの異動もありますが、ネットワークサロンが窓口を引き受けることで、継続性や柔軟性をうまく発揮しています。
ほかにも、釧路市民活動センターわっとができるプロセスにも複数の理事が関わりましたし、2009年8月からは上記の「ふれあい」のスタイルに準じて、標茶町の児童デイサービス「みなみな」の運営協力も行い、もう少しで独立へと準備が進んでいるようです。まだまだ、窓口としてネットワークサロンを活用したり、北海道NPOサポートセンターの地域機能として連携事業に取り組んだりしているものなど多くあります。
こうした地域資源やネットワークを創っていくことは、もちろん法人の社会的役割でもありますが、同時に関係機関をはじめとした地域からの法人事業への信頼や連携の基礎を構築することにつながっています。こうした地域への活動があるから、関係者との顔の見える関係が継続してできて、ネットワークサロンの活動への確実な理解や協力も促進されています。活動の広報はマスコミやホームページやパンフレットなど多くのメディアがありますが、私はこうした活動を通じた顔の見えるつながりや協働がもっとも有効で確かで心強い広報活動であると思っています。これからも、地域に必要とされる存在となるために社会資源(組織、ネットワーク、人材など)を生み出すことは非常に重要なのです。