虐待防止研修の報告

涼しい釧路も桜がすっかり散り、朝に明るくなる時間が日に日に早くなってきました。

「新年度になりました」と思ったら、すでに6月です。前回の近況報告で「次回は虐待防止研修について報告します!」と書いていたことに今頃気付いて、慌てて、記録を見ながら現場の学びの声を抜粋しています。

今回の虐待防止研修は大きなテーマとして「疑問に思ったら伝えてみる、話し合ってみる。事業所内で支援について振り返ったり、考えたりする機会が必要」という設定をしました。

現場からよく感じることの一つに「疑問や違和感などを持っていても直接言い合うことを避ける」という傾向がありました。

気持ち的にわからないでもないのですが、支援の仕事をするからには意見交換はとても大切です。

お互いに気になることを言えなくなってしまうと、支援は本人主体から支援者主体になってしまいます。でも、現実として言えない実態はかなりあるので、その理由について書いてもらいました。いくつか抜粋します。

  • スタッフ間が独自の考えを持ち、干渉はしないという暗黙のルールがあるかもしれない
  • 明らかに虐待だと思うことなら伝えることができるが、いわゆるグレーゾーンの場合そのスタッフとの関係が壊れるかも?と思い言えないことがある
  • 責任を持ちたくない、意見を言って否定されたくない、意見を言わなくても進むだろうなどネガティブな思いがあった。思ったたことをすぐに言える人もいれば、じっくり考えて言う人もいますし、人数が多いほど決まった人の意見になりがちで、皆が思ったことを言うのは、事前に議題を伝えていても難しいことが多かった
    ただミーティング中、話がそれて雑談になると意見が出たりもするので、少人数で話しやすい場や、短い時間で回数を増やすのも良いかなと思う
  • 伝えたくても、自分の考えが間違っているのではないか?〇〇さんに教えてもらった時と〇〇さんに教えてもらった事が違うから等、不安な部分もあるのではないかと思う
  • 支援についてあまり共有されることがなく、知らない、わからないことばかりで、疑問に思ってもそういうものなのかな?と自分で勝手に完結させてしまっていることも多かったと思うので、知らない、わからないからこそ聞くという意識を持ってその上で疑問に思ったことを伝えていくことからしていこうと思う
  • 「今、忙しいのではないか」「仕事の後も忙しいかもしれない」「仕事後は仕事の話をせず、リラックスしたい人もいるかもしれない」と思って話しかけられずにいることが多かった
  • 支援について話すのがいやなのは、相手と自分の支援のスタイルが合わないなーと思ってる時や、一度すれ違ったことがある時は本当に話せなくなる。でも、合わないからこそ自分とは別の視点で気づきを与えてくれる時もあるから避けないでやらなければなぁと思ってる…。
    どんな人なのか分からないと話せない時もあるので、事業所の中でお互いを知り合う機会は作っていかなきゃな…と思ってるので、来年度からは交換ノートを始めようかなと考えている
  • 経験が浅いと、どうしてもそのやり方(経験ある人の行動)が正解なのか…?と思ってしまうから伝え合うのが難しい(自分の行動が間違っていると責められたりしたらどうしようの不安)
  • この人に話してもしかたないと思ってしまうことがある
  • 人に相談した時にもらえる意見で、自分はこう思っている、こういう行動をした、でも悩んでいるという時に相談するけれど、不安な気持ちでいる中でもしそれは違うというか、その人にその人に適していない支援ではないかと言われた時に、自分を否定された気持ちになってしまうのではないかと思ってしまう(相手はそんなことを思ってなくても)
    その人の中では「適さない支援をした自分」がいて、それがずっと残ったままなのが不安になる。こうしてみようという考えを相手に言うタイミングがわからなくて、何も言えないままになる
  • 職務遂行上の指摘や意見の伝え合いは個人の感情を乗せたり価値観を反映させずに議論するものだと思いますが、伝え合うことで揉めてしまったり職員間の人間関係がこじれてしまうのを恐れたり面倒に感じてしまうことが多いからなのかと思う
    そこには、この人には言っても大丈夫だという信頼感のなさ(その人個人の人間性に対してではなく、仕事上のものとして自分の言葉を受け止めてくれるかどうかの信頼)が要因の一つしてあると思います。抱く感情と起きている事象は切り分けるべきという考えがなかなか難しいのだと思う
  • 疑問に思ってすぐの現場にいる人には現場のため説明しやすいが、少し時間をおいてしまったり、その現場についてあまり共有できていないと説明が難しかったり、想像がわかずニュアンスまで伝えづらく、お互い違った認識で把握してしまうかもしれないと思う
    そういったことを恐れていたり、偏った人としか会う機会がなく特定の人に伝えて満足してしまっている
  • 自分の意見が正しいか誤っているかという考えが先にきてしまい意見を述べることをためらってしまう節がある、加えて他人の意見に流されやすい部分もある

全体的に「時間がない」という意見も多くありました。福祉現場は人手不足が日常化しているため、仕事にどうしても追われてしまいます。そのような中で、意見交換する時間をとるのは意識しないとできないことになりつつあります。

ただ、意識してみるとできることとも言えます。

近年、福祉が産業となり、労働現場になったことによって支援をする人たちの関わり方に難しい側面があるのかなと思っています。

労働として関わると労働基準法があり、1日何時間までという基準があり、シフトによって人と人との関わりがシステム化されます。

労働者の権利はもちろん大切なのですが、24時間365日を支える生活支援をするためには、他の仕事とはちょっと事情が異なるので、もう少し柔軟でもいいのではないかと思うところもあります。

日本社会では長時間労働(特に男性の)が問題になって久しく、その影響で女性が家事や育児の負担をし続けている実情もあるため、働き方を見直すことはとても大切だと思います。

一方では、仕事の内容や働く人の事情によっては画一的ではないやり方があってもいいと思ったりしています。

さて、今月は先日理事会が終了し、23日は総会があります。あまり間を空けずに次の報告をしたいと思っています。